会社の力を底上げする経営手法
私の周りには、様々な職業に就いている友人・知人がいますが、その中でも、将来、会社の経営者となる友達がいます。
彼は現在、部長として特定の部で働きながら、自分が引き継いだ後の会社の舵取りについて考えるという立場にいます。
会社内でコンピュータ全般に関して不明なことがあると、その都度、私がアドバイスをするという事を数年前からしていたのですが、ここ最近は、会社経営を含めた質問をされることが多くなってきました。
昨日、その彼から連絡があり、自宅に呼ばれて会社経営などを含めた話をしてきたのですが、彼が抱えている組織的な課題に対して、現在の私(いち企業に属している従業員)という立場から、思う事を伝えてみました。
誰のための組織なのか
会社に所属をする人とは「特定の業務内容に於いて、自分の能力を発揮し成果をだすことで、定められた給与を支給される人」という事になるかと思いますが、それは従業員だけで無く、会社役員や社長も同様の事が言えます。
お客様とのコミュニケーションをする事が業務内容の人もいれば、機械と向き合って黙々と何かを作るという人もいるでしょうし、会社の仕組みや経営を考える人もいるでしょう。
様々な業務を分担し合い、1人1人が自らの能力を発揮することで利益を生む。その結果、会社として機能をしているということになるわけです。
彼は今、現在の会社の組織を見渡しながら、数年後にどのようにするのが望ましいかを考えていて、定年で抜けてしまう人の穴埋めがどうしてもできないと言っています。
長年に渡って会社で能力を発揮された人の穴を埋めるのは、そう簡単なことではありません。
しかし、突発的に人が辞める事を除けば、抜けてしまう人の穴を埋める人を育てる事は出来るはずです。
もちろん、どうしても今のメンバーでは埋められないということもあるでしょう。その際は新しい人を採用することで補う事は出来るはずです。
私が友達の話しを聞いていて問題だなと感じたのは「今のメンバーでは本当に埋められないのか」を、彼が判断できないという点についてでした。
「入社して間がない人達から、何か不満とか意見とか出てる?」と聞いてみると、その人達とは、あまりコミュニケーションがとれていないとのことでした。
それは、距離が問題であったり、ちょうど繁忙期であったりと、理由は様々ではあるようですが、今の規模であってもコミュニケーションが取れていないのであれば、彼の言っている「何をする人が足りないのか」を判断することさえ難しいわけです。
半年前と全く同じという人は少ないはずです。
「旅行に出かけた」「何かを買った」「誰かと出会った」「新しい趣味ができた」「将来の夢ができた」「子供が生まれた」etc…
1人1人のそんな小さな出来事でも、従業員の数だけ集まれば、もしかすると「これまで出来なかった事が出来る組織」に変わっているかもしれません。
会社が沢山の人が集まって成り立つ組織であるならば、1人1人の能力を少しずつ出し合ったり、内に秘めている能力を引き出してあげることで、その組織をより強固なものにする事ができます。
もしかすると「埋められない穴」だと思っていた部分も、埋めることが出来るようになるかもしれませんし、そもそも論で、もっと良い組織編成が組めるかもしれません。
「あの人はそういう人だから」という固定概念フィルターを一旦取り去り、この半年でその人がどのような変化をしたのかを純粋に見てみると、組織として思いがけない変化のきっかけになるかもしれません。
今以上の能力を発揮して貰えることで会社はプラスになるだけではなく、従事する人1人1人も「あれ?自分のこと見てくれていたんだ」とか「こんな些細なことまで配慮してくれているんだ」と感じてもらうことで「自分が働いている会社」から「自分が所属をするべき会社」へと意識が変化するはずです。
アイデアの出し方と委譲
現場で働く人の中には「上司の指示通り、この手順に沿って仕事をしていればいい」と思う人もいれば「ここの作業を、こうすればもっと効率的になるのに」と思っていたり、「そもそもこれをやる意味あるのかな?」と思っている人もいることでしょう。
それは「指示通りに仕事をする」という事を非難しているわけでは無く、改革することが出来る部分があるかもしれないということです。
もし、改革できる部分があるならば、その意見を吸い上げる組織にすることで、「もっと早くやっていれば良かった」と思えるかもしれませんし、「それは○○というリスクを背負う事になるからダメだけれど、そのリスクも加味して出来そうな方法はないかな?」といった前向きな検討が組織全体で出来るかもしれません。
「この分野は確実に衰退をする」「利益が上がらなくなってゆく」という部分があるならば、「これまでの作業時間を減らせないだろうか」「関わる人数を減らせないだろうか」といった事を上層部だけで決めるのでは無く、実際に作業をしている人達からアイデアを出してもらう事で、その改革が進んでゆくかもしれません。
もしかすると新しいビジネスアイデアが出てくるかもしれません。
もし、新しいビジネスアイデアが出てきた場合は、そのアイデアを出した人を入れて、新しいプロジェクトにすると良いでしょう。
一番望ましいのは、そのアイデアを出した人がリーダーになる事ですが、性格的に「リーダーになるのは嫌だ」という人もいるでしょう。
そうなると「良いアイデアがあるけど、リーダーにはなりたくない」と思い、そのアイデアは埋没され、組織としてはマイナスになってしまいます。
ビジネスアイデアを出した人と、気の合う誰か数人(1人か2人程度)の小さな新チームを発足し、日常業務の合間を使ってビジネスモデルを描いてみることで、本当にそれが有効なのかどうかを判断することができるでしょう。
ここで大切なのは「アイデアを膨らませる」ことと「アイデアにいろんな事をくっつけること」を一緒にしてしまわないことでしょう。
アイデアをブラッシュアップするなかで「これを盛り込む方がビジネス的に成功する」という流れになる事が理想であり、「どうせなら、こんな事も、あんな事もやろう」とくっつけてしまうと、最初に描いていた物と全く別の物になってしまい、出口が見えずに頓挫してしまいます。
また、そのチームに対して、ある程度の権限を委譲することで、動きが速くなります。
「進捗を毎日日報にまとめて上司に報告をして、上司の確認後に、その続きの作業をする」といったプロセスを踏んでいるとスピード感がなくなるだけでなく、その上司が手柄を奪ってしまいかねません。
「上司に手柄を持って行かれること」ほどモチベーションを下げる特効薬はありませんし、そのような組織では「どうせ上司の手柄になるんだし、このアイデアを出すのはよそう」という悪循環を生むことになってしまいます。
また、もし、チームだけでは解決が出来ないという時には、社内の誰かをチームに入れる事が出来るという柔軟なルールがあれば、新しい人のアイデアによって、全く違う方向から解決の糸口を見つけることが出来るかもしれません。
一番の理想は、「何時何時までにここまでの成果を出して欲しい」という進捗目標を提示し、それに向かって必要な事があれば、チームの権限内で動く。
そして上司や経営陣は「大枠がずれていないか」「期限内・予算内でできるのか」という部分の確認を定期的にする。
このように役割分担をすることで、チーム内に責任感が生まれてきますし、経営陣はこの商品をどのように展開して行くのかという経営戦略を練ることに集中できます。
そんな組織作りができれば、働く人1人1人が能力を発揮でき、組織の力の底上げが出来るのではないでしょうか。
過去の資産を活かす
意見の通りやすい組織に変えたり、アイデアを活かせる組織に変えることを、論理に文字に起こすのは簡単でも、実際に実現するのは大変難しいことです。
私の友達も「それはそうなんだけど、今の状態じゃ、そこまで持って行けない」と言っていました。
何故なのかは、簡単に聞きましたが、おそらく私には言えないいろいろな理由があって、その言葉になったのでしょう。
将来的にはそうした組織の事を考えないといけないけれど、まずは目の前の売上を上げることが急務という場合もあるかもしれません。
そういった場合は、新しい事をするよりも、過去の資産を活かして、新しい事に転用できないかを考える方がリスクが少ないわけです。
例えば、私達のようなweb屋の場合は、既存のプログラムなどはそのまま使って、外側だけすげ替えて新しいサービスを作るといったことはよく行われます。
簡単なお問い合わせフォームであったり、既に社内で使っているシステムに手を加えて、お客様に提供をするサイトにしたり、といった比較的大きな物まで、プログラムやDB設計などを流用しながら新しい物を作ります。
特に短期間で何かを作らなければならない場合は、効率よく作り、確かな売上を確保する方法を探る必要があります。
例えば、任天堂が 2013年9月26日に発売をした「ゼルダの伝説 風のタクト HD」は、ゲームキューブのデータを元に、1年未満の期間で開発が進められました。
参照:社長が訊く『ゼルダの伝説 風のタクト HD』 より
そして、このゲームは、2014年3月気の決算報告に於いて、全世界で115万本の販売本数になりました。(※ WiiU本体に同梱して出荷された分も含む)
参照:2014年3月期 第3四半期決算説明会 参考資料 より
このように、過去の資産を上手く使いながら、即売上につなげられるというのは大変有効な方法です。
友人の会社では、業界内のシステムの開発を行っており、現在の販路はごく一部の地域に限られているため、そのシステムをそのまま他の地域に販売する事が出来れば、過去の資産を活かしながら売上につなげることが出来ます。
もちろん、他地域の既存顧客や新規顧客に対し、現在使っている類似・競合するシステムから置き換えてもらうには、相当の企業努力が必要になるでしょうが、競合他社のシステムとの違いをしっかりと説明し、乗り換えていただくメリットを見いだして貰える販促活動が出来れば、売上につなげることが出来るはずです。
とはいえ、現社長が、それを良しと思わなければ、実現はしないですし、私のような外部の人間がどうこう言っても、何も変わらないというのが現実ではありますが…。
でも結局は、自分がどこに向かうかだよね
その日は、このような話しをして終わったのですが、いつも最後は「最終的にどこを目標にするかだよね」という結論に至ります。
今後、彼自身が社長に就任をした際に、彼がどこを目指し、何をする事が会社の目的になるかによって、会社の基本理念も変わってきます。
現社長がこれまで培ってきた事を汲みながら、自分の作りたい組織を作るという場合でも、現在の社員全員が会社に残ってくれるとは限りませんし、残ってくれても賛同してくれる人ばかりとは限りません。
どのような会社にしたいのか、どこに向かってゆくのか、それは社会的に価値があり、社員にとっても良いことなのかなど、考えることが沢山あると感じます。
私自身、人との出会いから学ぶ事が多くなっています。
彼のように、将来的に会社を経営するという立場にはいませんが、数年後・数十年後、自分自身が進むべきというか、人として目指してゆきたい姿に、今日より明日、近づけるように努力をしてゆきたいと感じます。
最後になりますが、この友人とは、以前に書いた「組織に応じたシステム設計の重要性」と同一人物です。